佐沼屋呉服店

Sanumaya’s story

佐沼屋の願い

新しい生活様式の時に入りながらも、お客様に恵まれ、社員さんに恵まれ、仕入れ先様に恵まれ、日々商いをさせて頂いております。

学卒後、呉服店の息子というだけで明確な意思も無いまま、埼玉県のきもの専門店に三年の約束で修業に行きました。当時の佐沼屋は、着物、洋品・寝具・下着を扱う総合店でしたが、時代の流れで競合店も増え売上は右肩下がりが続き、学生の私にも生活の厳しさが伝わってくる状況でした。

修業先での入社一年目、振袖の勧誘も一段落したある日、ひとりのお客様がご来店されました。
「娘に振袖を着せたいので、持って来て見せて欲しい。」そう言われました。

佐沼屋呉服店グループ
代表取締役社長 石島通孝

実はその方は、私が少し前に五回訪問させて頂き、五回目の時には「うちは振袖はいらないから、もう来ないでで欲しい。」そうおっしゃったお客様でした。
お伺いして初めて座敷に上がらせて頂くと、そこには寝たきりのお嬢様がいらっしゃいました。
お嬢様の布団の上からお母様が何枚か振袖をかけて差し上げて、手鏡でお嬢様にお見せになり、もの言えぬお嬢様が一番嬉しそうな顔をされた振袖をお買い上げ頂きました。

商談を終え、玄関から出ようとする私に、お母様が「本当にありがとう。」深々と頭を下げて、そう仰って下さいました。初めてお母様の本当のお気持ちが分かり、着物の商売をさせて頂いて本当に良かった、一生涯、貫ける仕事だと感じました。

『すべてのお嬢様に振袖を着て頂きたい!その時の強い感動が今も商いの原動力です。その想いは現在「座ったままで誰でも簡単に着られる車椅子用の振袖」のオリジナル製作にも繋がっています。

岩手県からご来店いただき、車椅子用のお振袖をお求めいただきました。

様々なお客様の、ご家族や大切な方への深い想いを垣間見る修行の日々を終え、私もまた、祖父や父・母への想いからこの佐沼屋を継ぐ決心をしました。

お客様と社員の皆様が、
佐沼屋の財産です。

私のきもの一筋の人生を振り返れば、お客様に支えられ、助けられ、教えられ、励まされ続けた年月でした。
娘さんの成人式から婚礼、そして「おぎゃあ!」と産まれた愛らしいお孫さんのお宮参りの小さな衣装まで、「母・娘・孫」と三代に渡りご縁を下さるお客様も少なくありません。本当に有難いことです。

誕生・入学・卒業・冠婚葬祭、あらゆる時、いかなる時も、
ゆりかごからその先も...。

それぞれのお客様の歴史の傍らで、ささやかながらも、お手伝いさせて頂ける機会を与えてくださった事、また、今、そうさせて頂けている事、お客様の笑顔が走馬灯のように思い浮かばれ、胸が熱くなります。ありがとうございます。

「きもの」の道で、本当に多くのお客様と出逢い、お心、ご縁を頂いて、私は社員さん達と共に生かされてきました。

少しでも多く、長く、このご恩に見合うお手伝いを続けたいと思っております。
かつて総合店であった佐沼屋の本領を発揮して、昨今、様々な商品のご案内に取り組むのも、その願いからでございます。

「お客様の幸せを丸ごとお手伝い」そう出来たらと願います。

「きもの」は特別な衣服です。
美しく着飾るだけの衣ではなく、着るだけで相手を敬う気持ちを伝える事も出来ます。
着るだけで高揚感に包まれます。
折に触れ、伝統や行事や思い出を、更に鮮やかに、更に忘れ難い物にしてくれます。

大切な機会の為に選ぶ物だからこそ、きもの選びには、ご不安な事も殊更あるかと思います。そのご不安を取り除く力になりたいとも思っております。

「いつもの日にも、特別な日にも。
 きものを通して笑顔と喜び」に満たされて頂けますように。
「幸せ丸ごとお手伝い」できますように。

私達佐沼屋は、いつも、いつも初⼼に戻って、皆様と共に笑い、喜び、時には涙し、お心に寄り添うきもの屋でありたいと願っております。

どうぞお気軽に何なりとご相談ください。

佐沼屋呉服店グループ 代表取締役社長 石島通孝

牛久市の日本遺産「牛久シャトー」にてお客様 と着物を着て見学。