佐沼屋呉服店

2024.11.19

こんにちは、佐沼屋です。皆さんは黒留袖がどういう着物かご存知ですか?結婚式や公式な場面でよく目にするかもしれませんが、名前自体は初めて聞くという方も多いかもしれません。今回は日本の伝統的な着物の一つで、特に大切な場面で選ばれることが多い黒留袖についてご紹介します。


 


黒留袖は、既婚女性が着ることができる着物の中で最も格式が高い「第一礼装」です。黒い地色に、裾部分だけに「絵羽模様」という縫い目をまたいだ模様が入っているのが特徴です。また、五つの家紋が入っていることも黒留袖の大きな特徴です。


黒留袖は、主に結婚式や披露宴のような喜ばしい場面で、新郎新婦の親族や仲人の女性のみが着ることがマナーとされています。そのため、招待されたゲストが黒留袖を着用するのは避けるべきです。また、結婚式や披露宴では両家の親族が着物の格を揃えることが一般的とされています。黒留袖を着る場合には、事前に両家で相談して装いの格を合わせることが大切です。


新郎新婦の母親の場合、落ち着いた雰囲気で、年齢にふさわしい格調高い柄を選ぶと良いでしょう。例えば鶴亀、松竹梅、四君子、鳳凰などは、喜びを表すと同時に高貴な印象も与える柄です。その他にも、雀や扇、宝船なども縁起の良い柄として人気です。


もし新郎新婦の母親が黒留袖を着る場合、親族の既婚女性は黒留袖や色留袖を、未婚女性は振袖を着るのが一般的です。姉妹や祖母、叔母なども正礼装や準礼装を着ることが推奨されます。袋帯も、黒留袖に合わせた格式の高いものを選びましょう。金糸や銀糸を使用した華やかな帯や、唐織や綴織といった品格のある織物がよく合います。また、黒留袖の帯は「二重太鼓」という形で結ぶのが基本で、これば喜びが重なるようにという意味が込められています。


仲人として出席する場合は、年齢にかかわらず落ち着いた上品な柄を選ぶのが良いでしょう。帯も同じく控え目で上品なものを選ぶことで、立場にふさわしい格調を演出できます。帯揚げや帯締め、足袋は「白」を基本とするのが礼儀です。


草履やハンドバッグも、黒留袖の格式に合わせてゴールドやシルバーが織り込まれた華やかなデザインのものを選ぶのが理想的です。草履は通常よりかかとが少し高い「礼装用」のものが適しています。また、草履とハンドバッグの色や質感を揃えることでコーディネート全体がまとまりやすくなります。ただし、革製品は「殺生」を連想させるため、結婚式では避けた方が良いとされています。


 


黒留袖の正式な名称は「日向五つ紋付き黒地裾模様の留袖」といい、その名の通り、背中、両袖、そして両胸にそれぞれ一つずつ最も格式の高い「染め抜き日向紋」が五つ入ります。色留袖のように三つ紋や一つ紋を入れることはありません。もし自分の家紋がわからない場合やレンタルで黒留袖を借りる場合には、誰でも使える「通紋」を選ぶことができます。


黒留袖は「比翼仕立て」という仕立て方法で作られており、まるで着物を二枚重ねているように見せる工夫がされています。現在では簡略化され、着物の衿や裾、袖口、振りの部分に羽二重の布を重ねて縫い付け、二枚重ねに見えるようにしています。この「比翼仕立て」は、もともと祝い事が重なることを願う意味合いが込められています。


 


いかがでしたか?結婚式というのは洋装でもマナーが複雑で迷うことが多いですが、着物を着る際にはさらに注意すべき点が増えてきますよね。特に黒留袖は格式が高く、選び方や着こなしに気を配ることでより一層その場にふさわしい印象を与えることができます。今回のお話を通じて黒留袖に関する理解がより深まり、自信を持って選べるようになっていただけたら幸いです。