よく「地位が人を作る」と言います。ポストを与えられたり、それなりの地位につくと、「大丈夫か?」「ちょっとまだ早いんじゃないか?」などと周囲から陰口をたたかれていた人でも、そのポストや地位にふさわしい人に成長していくという意味です。もちろん、中には期待外れということもあるのでしょうが、実際にそういうことが世の中ではたくさん起きているようです。
そんなことって、もしかすると着物にもいえるのではないでしょうか。スカートなどはかない男っぽいしゃべり方や所作のお嬢さんや、体育会系でスポーツに打ち込んでいてファッションや着物にあまり関心のないお嬢さんなどが、振袖をひとたび身にまとうと、女性らしいふるまいになったり、上品になったりします。一度袖を通しただけでも、瞬く間にいつもと違う雰囲気になるのですから驚きです。
振袖はいつもそうした新鮮なうれしい驚きを与えてくれますが、大人の着物もまた、それ以上の何か目に見えない力が働いているような気がしませんか?
例えば、とても重たい柄だったり、お手持ちの着物よりもはるかに華やかだったりする着物を目の前にして、ステキだとは思いつつ、とても自分には着こなせないと臆してしまうときがあります。「ゼッタイに似合わない」「とても無理」と確信をしてしまいます。でも、周囲に推され、応援してもらって恐る恐る袖を通して、何度か着こなしているうちに、重たい柄に負けない凛とした雰囲気が内面から出てくるではありませんか。どんなにお化粧をしても、口紅を赤くしても今ひとつ華やかさが表現できなかった方でも、華やかな加賀友禅の訪問着などをまとっているうちに、なんということでしょう、内側から華やかなローラが現れてくるのです。
着物には、理屈を超えた不思議な力があるのだと思います。近所や親戚など、周囲を見回してみると、やっぱり普段着物をお召しになる方にはすてきな人が多いことに気づかされます。そして良いものをさらりときこなしている方々は、なぜか生き生きとしてとても若々しいという不思議。
なりたい自分になるために、理想の自分を手に入れるために、この秋、着物の力を信じてみませんか?