佐沼屋呉服店

2023.12.08

こんにちは、佐沼屋呉服店です。今回は、着物のお手入れ方法についてお話します。


〇自宅でできるお手入れについて


着物を大切に着続けていくためには、着用後のひと手間が大切です。シミや汚れがなかった場合でも、着物を脱いだ後にやっていただきたいことは「ホコリをはらう」ことです。


ホコリには様々な化学物質が含まれていることがあり、このホコリを付着させ続けていると、着物を傷める原因になります(ウールやコットンの洋服も同じです。)


そこで、着物を抜いた後、きものハンガーにかけ、洋服用のブラシで軽くブラッシングしていただきたいのです。これだけでも着物の素材である絹にとってはとてもいいことなので、ぜひ行っていただきたいものです。


次に、着物にファンデーションや化粧品などがついている場合です。主に衿になるかと思いますが、この場合は衿の下にタオルをまずしいてください(上から汚れが落ちてきた場合の受けです。)。そして、ベンジンかリグロインをガーゼにたっぷりつけて、汚れた箇所を上から叩きます。この時「こすらない」ことがポイントです。こすると生地を傷めますし、汚れを拡げてしまうためです。


そして、落ちてきたことが確認出来たら、衿の両端をもってパタパタと乾燥させてください。ベンジンとリグロインは揮発性が高いので、すぐに乾燥します。


最後に、着物全体を風通しの良い場所で陰干しすることで湿気を逃がし、清潔な状態を保ちます。直射日光を避け、風通し良い室内やハンガーを使用しましょう。畳む際にシワができてしまった場合は、湿気を含ませた布で軽く湿らせ、優しく伸ばして整えると良いでしょう。


 


〇お手入れに出す場合の注意点について


自宅で処理が難しいシミや汚れが着物についてしまった場合、クリーニングに出す前にできるだけシミの種類を確認しましょう。特定のシミには特有の取扱いが必要であり、クリーニング店に正確な情報を提供することが重要です。たとえば、化粧品のシミや油脂汚れは専用の染み抜き剤が使用されることがあります。


クリーニングに出す前には着物の保管状態も確認しましょう。長期間放置したり、湿気やホコリにさらされていた場合、シミが取りづらくなる可能性があります。定期的な陰干しや適切な保管を心掛け、着物を美しく保ちましょう。


信頼性のあるクリーニング店を選ぶことも重要です。口コミや評判を確認し、着物の取扱いに慣れたクリーニング店を選ぶことが良い結果を生むポイントです。また、クリーニングを呉服屋に出す方法もあります。呉服屋は着物の専門家であり、着物に適したクリーニング方法やお手入れのアドバイスを提供してくれることが期待できます。


 


ここからは、着物以外の小物のお手入れについてお話します。


 


〇長襦袢


長襦袢のお手入れは素材によって異なります。ポリエステル製の場合、脱いだ後には着物と一緒に半日ほど陰干しし、湿気を逃がして清潔に保ちます。素材がポリエステルのため、陰干しとベンジンを使ったケアで4~5回は着用可能です。汚れが気になる場合は、ワイシャツ大に畳んで、目の細かい洗濯ネットに入れてデリケート洗い弱水流コースで洗濯すると効果的です。


一方、絹製は専門店に依頼するのが無難です。絹はデリケートで特別なケアが必要なので、専門家の手によるお手入れですと素材を傷つけずにおこなえます。絹の長襦袢は慎重に取り扱い、美しい状態を維持するためにはプロの手に頼ることが賢明です。素材ごとに適切なお手入れを心掛け、着物の美しさをいつまでも楽しんでください。


 


〇帯


帯のお手入れは慎重におこなってください。まず、帯についたホコリや汚れを柔らかい手ぬぐいやブラシを使って優しく払い落します。特に刺しゅうや柄の細かい箇所には注意が必要で、力を入れ過ぎないように心掛けましょう。


シミができてしまった場合は、着物専門店に汚れ落としをお願いするのが無難です。ご自身での汚れ落としは控えていただいた方がいいでしょう。


帯は基本的には湿気や太陽光を避け、風通しの良い場所で陰干しすることが大切です。長時間収納していた場合は、定期的な陰干しで湿気をとり除くことで帯の美しさを維持できます。保管時には、押し入れやクローゼットにハンガーを使用せず、折り畳んで保管すると帯にシワができにくくなります。


 


〇帯締め


通常は半日ほど陰干しするだけで十分です。汚れが気になる場合は、ベンジンを柔らかい布や綿棒につけ、帯締めの汚れやシミを優しく叩くようにして取り除きます。ベンジンを使用した後は、帯締めを風通しのよい場所で揮発させ、完全に乾燥させます。


 


〇帯揚げ


帯揚げも基本的には半日の陰干しで湿気を飛ばすだけで十分です。汚れが気になる場合は、帯締めと同じようにベンジンでのお手入れをしてください。また、素材によっては洗濯機での丸洗いも可能です。


 


〇半衿


絹や刺しゅうが施してあるものは半衿を扱えるクリーニング店に持ち込むのをオススメします。ポリエステルや木綿の半衿を自宅で洗濯する場合は襦袢から半衿を外し、洗濯機の「弱水流」で丸洗いができます。手で優しく絞ったら陰干しをして、生乾きの時にアイロンを掛けて仕上げます。


 


〇肌襦袢


洗濯機のデリケートコースなど弱水流で洗うことができます。手洗いする場合は、優しく押し洗いしてください。脱水後はシワを防ぐため直ぐに洗濯機から取り出し、畳んで両手で叩いてシワを伸ばし、ハンガーにかけて干してください。


 


〇足袋


足袋は汚れがつきやすいので、洗濯機で洗う前に前処理をすると良いでしょう。足袋の裏側が汚れている場合は、乾いた状態で叩いてできるだけ土や砂を落とし、洗剤を直接塗布してから手洗いで前処理すると汚れが落ちやすくなります。履いたその日のうちに洗濯できない場合は、中性洗剤を入れたぬるま湯につけておくようにしてください。


洗濯機に入れる際には、洗濯ネットに入れて他の下着類同様「弱水流」コースで洗うようにしてください。脱水後は形を整え、叩いて形を整えます。干す時は、必ず陰干しをしてください。


 


〇まとめ


一度でも袖を通した着物を長期間収納する際には、必ず事前にクリーニングへ出すことが着物を長生きさせるコツです。湿気や日光、風通しの良い場所での陰干しは、着物にとつてのエイジングケアです。着物はただの服ではなく、一生もののアートと言えます。その価値を大切にして、お手入れの工程も着物との素敵な旅路の一環として楽しんでください。