佐沼屋呉服店

2024.01.28

こんにちは、佐沼屋です。今回は御召についてのお話です。


「御召」とは、「御召縮緬」を省略した呼び方で、その名前が示す通り格式高く繊細な織り模様が特徴的な着物です。紬や木綿と同じ織の着物ですが、御召は特有の織り方と御召糸の使用により優雅で上品な雰囲気を醸し出しています。


御召糸は、染色された後に撚りをかけられ、その状態で御召糸として使用されます。この撚り加工により糸がしっかりとした強度を持ち、織りやすくなります。織り上げられた生地は、経糸と緯糸が交互に織り上げられ、湯通しを施すことでシャリ感のある凸凹の生地が完成します。この御召糸で織った生地はシャリ感のある上質な風合いと着心地の良さから、江戸時代は高貴な方に好まれていたようです。


独自の織り模様が生まれ、縮緬と呼ばれる由縁はここにあります。この美しい生地は、11代将軍の徳川家斉が好んで“お召し”になったことから、「御召」と呼ばれるようになりました。江戸時代まで武家や貴族に愛用されていた伝統的な着物であり、明治から昭和にかけては、西陣御召が実用的な選択として広く流行しました。戦後、御召の生産数は減少しましたが、明治時代の女学生の袴姿で知られる矢絣の御召は、憧れとされる存在でした。


「御召」と一口に言っても、そのバリエーションは豊富です。代表的なものには、縞や絣がありますが、無地や縞、格子、とび柄、小紋柄、絣柄など、様々な柄が存在します。柄の選択によって、御召はフォーマルな場だけでなく、カジュアルなシーンでも着こなすことができるため幅広いシーンで活用されている着物です。


一般的に、着物は「織り」よりも「染め」の方が格は高いとされています。通常、織りの着物はカジュアルな外出や普段着に適していますが、御召は「織り」の中でも最も格が高い部類に入ります。例えば、無地の御召に紋をつけることで結婚式などのフォーマルな場でも略礼装として着用することができます。御召のコーディネートでは、柄によって場の雰囲気や機会を考慮し、礼装の場合には礼装用の帯を選び、普段着用の御召には通常の帯を合わせるようにしましょう。


また、地紋や細かい縞などの模様が入った御召は、カジュアルなパーティであれば派手な模様であっても問題ありません。一方で、絣など全体にパターンのある模様が織られている場合は、他の織りの着物と同様に、普段着などカジュアルな場での着用がおすすめです。


男性の場合は紋をつけることで着物の格が上がりますが、女性の御召の場合は柄によって扱いが異なるため、着用の際には慎重に選ぶことが大切です。御召の多様性を活かして、日常のさまざまな場面で楽しんでみてください。


御召は、その特有の手触りが軽く、着た際のしわや着崩れが少ないという特徴を持っています。しかし、湿気に弱く縮みやすい傾向があるため、お手入れには注意が必要です。


着用後は、ハンガーに掛けて室内で数時間陰干しすることで、しわを伸ばし、湿気を取り除きましょう。これにより、御召の美しい状態を保つことができます。湿度が高い日や雨の日には、特に注意が必要です。保管の際も湿気の影響を受けないように心掛け、風通しの良い場所にしまってください。


御召は、その豊富な柄のバリエーションにより、様々なシーンで幅広く活躍する万能な着物ですが、数ある御召の中で佐沼屋がおすすめするのが舎人座です。舎人座の御召は控えめながらも洗練されたデザインが特徴で、年齢を問わずに着回しが効くため、長年にわたり多くの方から愛されてきました。


佐沼屋の2024年2月の一般展示会では、その舎人座の人気の御召がご覧いただけます。是非お立ち寄りの上、御召専門で織り上げている舎人座ならでは色もデザインも鮮やかな現代風御召を、お手に取ってお試しください。皆様のご来場を、社員一同、心よりお待ちしております。