〇『東洋と西洋の狭間』
西陣へ向かう道中、小雨はやがて雪へと変わっていきました。市内中心部より北に位置し、わずかに標高が高い西陣では、気温の違いが肌に感じられます。
そんななか、着物姿で出迎えてくださったのが、帯の製造・販売を手掛ける野中順子社長。雪がちらつく日とは思えないほど軽やかに、紋紗の帯を美しく締めこなしていらっしゃいました。
挨拶もそこそこに、案内された先に広がる陳列棚の美しさに、思わず取材の手が止まってしまう一行。見とれている私たちを前に、
「デザインしているのは若い女性なんですよ」という野中さん。作り手に男性の多い業界にあって、御召緯本撚り職人の平野弘明さんが瑞宝単光章を受章するなど、大ベテランの技術者がものづくりの根底を支える中で、感性やアイデア、デザインや着心地に関してなどの部分で野中社長や図案担当の中井春菜さんたち女性が活躍しているのが秦流舎の特徴であり強みです
御召は、徳川第十一代将軍斉公が好んで着用したことに由来し、高貴な方が御召しになったことから御召と呼ばれるようになりました。西陣織というと帯を思い浮かべる方が多い中、2007年には西陣織から「西陣御召」として独立した地域ブランドの証紙もできました。
これもすてき、あれも良いと新作に目移りしてワイワイと騒がしい取材班の感想や質問に一つひとつ丁寧に説明してくださる野中さん。
「うちでは毎年テーマを決めてもの作りをしているんです。今年のテーマは『東洋と西洋の狭間』という感じで取り組みました。なんとなくシルクロードの物語が次々と浮かんでくるようです。
〇通年着用への熱い思い
「紋紗というのは、透ける部分と透けない部分があるからこうした文様ができるわけです。そこで平織りとか綾織りといった透けない部分を増やしています。設計図の段階で調節ができるんです。昔の紋紗は紗の部分が多かったのですが、軽くてしっかりしている楽な素材という提案をしたくて、この帯はグレーとか黒の芯を入れたらほら、全然透けないんです」と、実際に作品を重ねて見せてくれます。
「透けさせると夏の素材になりますが、透けないように着ると通年で着用できるんですよ。お彼岸を過ぎたらもう、昼間はものすごく暑いでしょう?3月の終わりから11月の中頃までは昼間、極端に暑くなることがありますよね。季節じゃなくて、気温で提案したいと思っているんです」と、着る人ならではの感覚がもの作りに生かされています。
「この反物は普通の紋紗よりも糸数を増やして1.5倍くらいの糸数を使っているんです。そして銀通しなんです。襦袢を濃い色にしてもらったら透けないんですよ。夏物と思わずに、3月でも4月でも着てもらいたいと思っています」と言いながら次々と作品と見せてくれます。
※「るると」より要約引用