佐沼屋呉服店

2026.2.13

コスパ、タイパという言葉を耳にすることが多くなりました。若い方々の間では当たり前に使われている言語で、ご存知のとおりコストパフォーマンスからのタイムパフォーマンスを略しているわけです。コストパフォーマンスは、平たく言えば費用対効果ですからもちろん大切ですし、たいへん気になるところですが、なんとも切ないのがタイムパフォーマンスのほうです。そんなにも時間が足りないのでしょうか?


歳を重ねるごとに「あっという間の一日だったわ」「あ、もう夕食の支度をしなきゃ」、「もう8月?こないだお正月だったのに」、「え?もうプラごみの日?一週間は早いわ」と時間経過を早く感じることが増えていきます。幼い頃、一日は永遠のようで、ヘトヘトになるまで遊んでバタンキュー。中高年は細胞分裂がゆるやかになるからあっという間に時間が過ぎるのだとか、生きてきた時間分の1分は、分母が大きいほうが早く感じるのだとかいろいろな説がありますが、実際のところどうなのでしょう?


イントロが長い曲は聞かない、4秒以上のイントロがある曲は流行らないといいます。一つの音譜の中にたくさんの言語を詰め込んだ流行曲が増えました。映画やドラマは長いから2倍速で視聴。まぁ聞いているだけで目が回りそうな忙しさです。楽しみ方の選択肢や情報が増えすぎてしまっていっぱいいっぱいです。


靴下は定番の同じ物しか購入しない。洗濯してもそろえる必要がない、履くときも選ぶ時間がかからないからタイパが良い。なるほどそれも名案ですね。そういえばアップルコンピュータの創始者スティーブ・ジョブズさんはいつも黒のハイネックにジーパンというスタイルでした。もちろん洗い替えの枚数はお持ちだったでしょうが、超絶忙しい方ですから、同じ服を着ていれば服を選び、迷う時間が確かに省略できます。


同じグループ、同じ集まり、会社へ同じ服を着ていくのが恥ずかしい時代はもう、とうの昔に通り過ぎて、今は、似合う物、着心地の良い物、自分らしくいられる物を大切に着る時代なのかもしれません。年上の兄弟、姉妹や親のお古を着るだけでなく、親が子どもの着なくなった服を着たりすることもあります。西洋化した大量生産大量消費の時代から、日本人の価値観が少しずつ、循環型社会、つまり、もとの和の世界、着物の世界へ寄ってきているようなささやかな予感すらします。


着物は仕立て直したり、手入れをしたりしながら、お下がりもお上がりも、三代、四代に渡って受け継ぐことができます。たためばペッタンコになって収納の場所もとらない。着て出かければ周囲の視線もうれし恥ずかし、レストランなどでは丁寧な接客を受けられたりと「着物力」によって、良いことがたくさん起こります。


高度経済成長を支えて日本を豊かにしたのに「ドブネズミルック」などと言われていたお父さんたち、バブルの時代も〇〇ハラなどに耐えて必死で働いてきた頑張り屋さんも、着心地の良い着物を身にまとい、準備や後片付けまで含めてゆったりと、ゆっくりと、心豊かな人生を存分に楽しんでみませんか?